クロロフィルの研究と歴史

クロロフィルと人間の健康に関する研究が注目されるまで

ハンス・フィッシャー (1881年〜 1945年)

ハンス・フィッシャー
(1881年〜 1945年)

我々の生命にとって重要な関わりを持つクロロフィルは、昔から化学者や物理学者の関心を集め、その不思議な分子の姿を知るのに化学、物理学者の労が費やされました。まず植物の葉からクロロフィルを純粋に取り出すことに最初の研究目的がおかれ、1817年ピエール・ジョセフ・ペルティエとジョセフ・ベイネミ・カヴァントゥーによってクロロフィルは粗製の抽出物として初めて分離され、分子構造解明の開始となりました。しかしクロロフィルを純粋に分離することは困難を極め、クロロフィルを単体で分離することは不可能だという説まで発表されたのです。このような研究の混迷を極めた後、1906〜14年の間にウィルシュテッターとその共同研究者達がクロロフィルaとbを単体で分離することに成功し、分子の骨格構造を確立し研究の基礎を築きました。そして1920年になり、米国のJ.B.コナントとドイツのハンス・フィッシャーはクロロフィル分子全体の正しい構造式を決定すべく取り組み、やっと1939年に正しい構造式を発表しました。ウィルシュテッター及びフィッシャーはこの業績によりノーベル賞を受賞しました。それを機にクロロフィルの研究熱は一段と高まり、光合成のメカニズムとそれに関与する分子の機構の研究がめざましく発展してきました。そして近年では光合成のメカニズムにおけて水を分解する初期過程の謎が、だいぶ明らかにされつつあります。光合成の研究はまさにクロロフィルの純粋分離と、その分子構造の持つ電気物理学の解明に目的が置かれているのです。そして現在のエネルギー問題においても石炭、石油依存を脱し水素ガスを用いるクリーンエネルギーがクローズアップされており、植物の光合成を模倣する研究が多方面で行われています。

天然のクロロフィルの医学効果

医学の分野においてもクロロフィルと人間の健康に関する研究も純粋なクロロフィルが分離されるようになると急速に進んでいきました。クロロフィルは光によりその働きが発揮される以外に、光が届かない身体の中でも有効な働きがすることが判ってきました。クロロフィルに脱臭作用があることは古くから知られておりましたが、1919年には造血機能の促進、1922年には細胞を活発化させ創傷や潰瘍の治癒を促進させることが医学論文で報告されました。1966年ごろより多くの医学分野において数々のクロロフィルの医学効果が発表されるようになりました。脳神経系に意外な効果が認められ続いて、すい炎に対する劇的な効果が認められ、肝炎と腎炎にも新たな効果が発表されました。

富士エス・エル・アイ クロロフィル事業部の研究

天然クロロフィルは、研究用試薬:大学や研究機関において光合成の研究、エネルギー変換の研究、環境計測の研究などに使われています。

医学的研究:クロロフィルより化学変性させたフェオフォーバイドはPDT(光化学治療)に使われ、レーザ光線と併用することによる、がん治療の研究が進んでおります。またそれはレーザと併用することにより耐性細菌に対する死滅効果があり、富士エス・エル・アイ クロロフィル事業部は大学との共同研究によりその製品化に向け取り組んでいます。

富士エス・エル・アイ クロロフィル事業部(旧クロロフィル研究所)と大学との共同研究を一部ご紹介

参照:科学技術の総合ポータルサイト